隠居生活

限界勤め人だった著者の隠居生活を綴ります

講談社2019年度定期採用ページ

2018/3/14(水)

朝 オールブラン、コーンスープ 昼 おにぎり1個 間 オールドファッション、ウィルキンソンレモン 夕 焼き鳥、凍天、シュークリーム

一言 ホワイトデー。


朝。眠気まなこをこすりながら、講談社採用担当のつぶやきを読む。2019年の採用ホームページのリンクをタップする。昨年度までとは打って変わって「THE出版社」感が高めのホームページになった印象。

そこで「校閲」の仕事内容を見る。なぜか泣きそうになる。 自分がこの会社で働いていたら今頃どんなだったか、と想像する。 新卒で入ったとすれば4年。東京での生活にも慣れた頃だろう。グチグチ不平不満を言って転職を考えるなどしていたかもしれないし、「弊社最高♡一生お世話になります〜」という感じで社畜道を邁進していたかもしれない。

講談社校閲職にはどんなやりがいがあっただろうか。 少しだけ想像してみる。

出版物の品質保証とは、突き詰めると「作り手(たち)の信用と作品の魅力を守ること」だと思う。

私がもし講談社校閲職として働いていたら、「コンテンツの魅力を守る」を第一義に仕事をしているような気がする。会社のため、というよりは、出版に関わる人たち・広義の作り手たちをリスペクトする気持ちを強く持って校閲できていたら、青臭いかもしれないがいい感じだ。(実際には目の前の仕事を次から次とこなしていくので精いっぱいで、なかなかそういった「大義」を持ちづらいかもしれない)

校閲者は裏方、縁の下の力持ち、ゴールキーパーであるという。加点方式ではなく減点方式。コンテンツの魅力を「守る」仕事。これは見方を変えれば「コンテンツが本来持っている魅力を最大限に引き出す」仕事と捉えることができるだろう。

学生時代に、指導教員が書いた量子力学の教科書の校閲をした。研究室に入って一番最初に与えられたミッションだった。私はその教科書に魅力を感じていたが、同時に難解な書きぶりや計算結果に関する一部の誤りが教科書としての価値を大きく損ねているとも感じていた。事実、その教科書の評判はひどいものだった。

「てにをは」、読点の位置、言葉そのもの(意味)、数値や数式に関して誤りと思われる箇所に付箋を貼っていくと、一冊の本がまるで"七夕飾り"のようになった。

教授とのやりとりを経て、最終的に修正された「改訂版」を手にとったとき、本の魅力を最大限に引き出せたような手応えを感じた。また、隅から隅まで読んだことで自分自身の知識欲が大いに満たされたことを知った。

就活で、自分が何をしたいか迷ったときに思い浮かんだのは本だった。節目節目で自分の人生に大きな影響を与えたのは本だった。小さい頃から活字を読むことだけは飽きずに続けてこられた。

そうした点と点を結んだ結果、校閲という職業に行き着いたのだった。そのなかで「なぜ講談社か」を語るのはまた別の機会に譲る。さわりだけ書くならば、「ブルーバックス」であり「当時の採用担当者の風貌・言説(魅力)」であり「OG訪問」の結果である。

結果、講談社には三次面接で落ちてしまったものの、就活の中で講談社にたどり着けたのは我ながらナイスだった。(「斜陽産業」などと言いたい人には言わせておけばいい)

*** 寝る前にこの記事を書いているのだけれど、 何が言いたいかって、朝から胸が痛くなったって話だよ。

(参考リンク) 講談社2019年度定期採用ページ