隠居生活

限界勤め人だった著者の隠居生活を綴ります

塩2023.4.10

人に冷たくされるという経験があまりない人生だった。

 

愛想が良いか悪いかでいうと、良い方だと思う。

 

人に特別に嫌われもしないが、同時に特別に好かれることもない人生だった。

 

多くの人と仲良くなるよりも、少数であっても心許せる関係を重視していた。

 

たまに、ほんと~うにたまになのだけれど、「特別に」好いてくれる人がひょっこり現れることもあって、それは自分にはとてもありがたいことだった。

 

いま思い出しても、優しく手を差しのべてくれて一時代を共にしてくれた人へ感謝の思いしかない。

 

(きっとこの雑記ブログを読んでくれている人のなかにもそのうちの1人がいると思っています。)

 

話を戻そう。

 

敵意だとか悪意だとか、冷笑、侮蔑みたいなものをあからさまに向けられることは、気づいてなかっただけかもしれないが、そんなになかった。

 

唯一、記憶にあるのは幼稚園の頃に描いた母親の絵を見た同級生の親に、母子家庭であることを露骨に蔑まれたくらいである。

 

とにかくまぁ、鈍感なだけだったのかもしれないけれど、わりと「他者からの強い拒絶」みたいなものとは無縁の人生だった。

 

ましてや、仲が良いと思っている人や、「仲良くしたい」と好意を寄せてリスペクトしている相手から拒絶に近い対応をとられることはこれまでの人生で皆無だった。相手が心のなかでどう思っているかどうかは別にして、少なくとも表面上は「普通」の態度を装ってくれる人ばかりだった。

 

異性に対する強烈な好意を起点として、独り善がりな行動をとりまくって嫌われたり冷たくあしらわれた経験はあるけれど、それは完全に自分が悪い。

 

そういうんじゃなく、異性じゃなく、シンプルに男友だち、仲間と思っている存在(そもそもそんな風に思う相手は非常に限られる)から距離を置かれることは人生で初めての経験かもしれない。

 

いや、高校時代にもあった。

 

よく一緒に体育館の小部屋で昼メシを食べる仲だった「オグニコフ」とあるとき絶縁してしまった。

 

あのときも自分に非があった。

 

もう15年以上前の話で、なぜ口論になったか覚えていないけれど、自分の方が言い過ぎてしまったことをぼんやりと覚えている。

 

後悔し、オグニコフに謝った。

 

いくら謝っても、関係を修復することはできなかった。

 

また、話を戻そう。

 

というか、本題に入ろう。

 

誰から拒絶されたかというと、前職の同期だ。

 

いっしょに富士山旅行にいったり、九州一周旅行にも行った、とても大切な人たち。(Twitterのヘッダーはその人たちと登った富士山頂の写真だ)

 

その仲間たちのグループチャットに、近況を伝えるメッセージを投稿した。

 

仕事の状況を伝えたあとに、ようやく長年(7年も!)付き合ったパートナーと結婚するのだと

 

その仲間たちの一人、同僚のなかでも最も長い時間を共に過ごしたに違いない人からの返信メッセージがどうにも塩なのだ。

 

NaClなのだ。

 

めちゃめちゃ雑で無感情で機械的な返信なのだ。

 

何年も前、九州旅行のある夜に、彼の琴線を「引きちぎる」ような発言をしてしまい、喧嘩したことが尾を引いているのはわかっている。

 

その後、彼との関係を再生させるために心を砕いてきた。

 

彼もそんなこちらの思いを理解してくれてか、それまでと同じように接してくれた。

 

私が退職するときは、本当に手を尽くしてくれて、様々なプレゼント、サプライズを用意してくれた。

 

感謝しかなくて、彼には何を返したら良いかわからない。

 

せめてこちらも礼は尽くしたい。

 

九州の夜の反省はしっかりと刻み込まれていた。

 

それからは、うっかりであっても失礼な発言をしないように、他のどんな相手よりも気をつけて、細心の注意と敬意を払いながら接してきた。

 

お互いバックグラウンドがけっこう違うけど(違うからこそ)、それを理解した上で、ずっとこの先も関係を続けていきたかった。

 

不器用だが真面目でたまに不真面目で、努力家の彼が、人として好きだった。

 

過去形ではない。

 

今なお、「やんわりとした」以上の拒絶を感じた上でなお、彼のことを尊敬している。

 

育児で忙しいに違いない。

 

【良いよな、お前はまだ俺より若くて子どももいないし、仕事だけしていればいいのだから、それは楽だよ】

 

彼のソルティな返信が、自分にはそんな風に響いた。

 

お盆には帰省をしてその会の皆に会える機会がある。

 

去年は仕事で、しかも弾丸だった。

 

今年は休みを取って必ず帰ると決めた。

 

彼はほんとうに子育て繁忙期だから来れないと思うし、そこは全然来てほしいとか無理強いするつもりもなく、むしろ「タイミングが合えばお頼み申し上げます」などとうざったいこと言ってごめん、という感じだ。

 

帰省のタイミングで彼に会えるかはわからないけれど、会えたら面と向かって心から感謝の言葉を伝えるとともに、何らかの「お返し」をしたい。

 

パッと思いつくのは飲み代みんなの分をおごるとか、東京のお土産を買って渡すとかなんだけど、そういうのはそういうのでやった上で、さらにロングスパンで謝意を表していきたい。

 

こんな思いをすることもあるから、まだまだ人生は楽しいと思う。

 

あしたもぼちぼち仕事に精を出して、一日を生き抜きたい。